研究概要 |
1.ヤママユガ科サミア属のエリサンとシンジュサン、およびその種間雑種について、エステラ-ゼアイソザイムの異同を調べた。両種の孵化幼虫では共通するバンドが検出されず、泳動パタ-ンに顕著な差があった。次いで、原種と種間雑種(正逆)の成虫頭部の泳動パタ-ンを比較した。両種間には差が認められたし、正逆いずれの交雑とも両種の中間であり、ややシンジュサンに近いパタ-ンであった。 2.ヤママユガ科アンセレア属のテンサン幼虫について、体液・中腸・マルピ-ギ管・脂肪体・絹糸腺・精巣・脳などにおける、エステラ-ゼザイモグラムを比較し、組織器官による活性帯の差異を明らかにした。また、中腸と絹糸腺におけるザイモグラムの、幼虫発育に伴う変化は、比較的小さいことを知った。 3.カイコガ科の野生のクワコとウスバクワゴの繭の性状の比較から、ウスバクワゴのほうが原始に近いと推測した。しかし両者の繭のアミノ酸組成は、相互によく類似することが判明した。したがって今後は、従来の家蚕ーークワコの線上にさらにウスバクワゴを置いて、家蚕の起源を考える必要があると思考される。 4.家蚕103品種を供試し、消化アミラ-ゼアイソザイムに3型(O型、IV型、V型)があること、およびアイソザイム型はアミラ-ゼ活性と関連することを明らかにした。またIV型とV型のアイソザイムの等電点を測定し、さらにアイソザイムの酵素学的性状の一部を解明した。消化アミラ-ゼの分子量は約53,500と推定した。 5.わが国におけるヤママユガ科の野生絹糸虫の由来と命名について文献学的に調査し、野生絹糸虫の類縁関係について考察した。
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