研究計画に基づき、大麦幼植物の根に存在する2種の硝酸還元酵素、すなわちNADH要求性酵素とNAD(P)H要求性酵素をブルーセファローズに吸着させ、0.1mMNADPHで、次いでNADHで溶出するとそれぞれNAD(P)H酵素とNADH酵素が分離された。本研究の特色であるNAD(P)H酵素をさらにブルーセファローズによる再クロマトにかけ、NADPHによるグラジエント溶出を行い、高比活性(2.56ユニット/mgタンパク質)のNAD(P)H酵素を得た。この酵素はNADPHをNADHより有効に利用し、活性比は1.2であり、この酵素反応ではNADPH酸化量と等量の亜硝酸とNADP^+が生成し、NO^-_3に対するKm値は0.19mM、至適phは7.5であり、これまで得られている同種の酵素と類似していた。大麦の葉にはNAD(P)H酵素が検出されず、NADH酵素のみが存在した。葉のNADH酵素と根のNADH酵素には免疫学的に識別出来なかったが、根のNAD(P)H酵素とは異なると推察された。 根に存在する2種の酵素の細胞内局在性を調べるため、まずトリトン×100の添加がNADH酵素よりもNAD(P)H酵素の可溶化を促進することからNAD(P)H酵素は膜に結合している可能性が示唆された。そこで購入したスイングロータを用いて水性2層分配法により原形質膜画分を調整し、NADPH活性を調べたが、活性が極めて小さく、操作途上で失活した。現在失活防止条件を詳細に検討しているところであるが、スイングロータを活用して原形質膜にNAD(P)H酵素が存在することを確認したいと考えている。 NAD(P)H酵素は培地にNO^-_3が存在しなくても検出され、また根軸に沿った分布ではほぼ均等に分布した。これは、NADH酵素と著しく異なり、NAD(P)H酵素はNADH酵素とは別の機能を担っている可能性を示唆しており、それが原形質膜に存在すれば大変興味深い。
|