研究概要 |
哺乳動物精子先体に含まれるアクロシンの構造と機能を明らかにするために、まず、ブタアクロシンのcDNAクローニングによりその全一次構造を推定することを試みた。ブタ精巣より作製したcDNAライブラリーを抗ブタアクロシン抗体をプローブとしてスクリーニングしたところ、2個の目的タンパク質に対するcDNAクローン(λPA2,λPA4)を単離した。さらに長いcDNAを得るために、λPA2をプローブとして再スクリーニングし、得られたcDNAについて全塩基配列をジデオキシ法により解析した。単離したブタアクロシンcDNAは、全長が1391塩基対であり、1245塩基より成る翻訳領域を含んでおり、415個のアミノ酸をコードしていることが判明した。その推定アミノ酸配列の17番目のアミノ酸Argから91番目のLysまでの配列は、既に報告されているブタプロアクロシンのN末端アミノ酸配列と完全に一致したことから、そのcDNAがブタアクロシン由来であることを確認した。ブタプロアクロシンは、SDS存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動で分子量55Kダルトンを与え、弱アルカリ性下で活性化し、分子量53、49、43Kダルトンに順次変化し、最終的に35Kダルトンの成熟アクロシンとなることが明らかとなったので、そのプロアクロシンの活性化機構の解明を目的として、各々の(プロ)アクロシンを単離し、N末端およびC末端アミノ酸配列の分析を行った。その結果とcDNAクローニングにより得られた推定アミノ酸配列の結果より、55、53Kダルトンのプロアクロシンは、各々、アミノ酸399個、383個より成る一本鎖ポリペプチドであり、49、43、35Kダルトンアクロシンは、アミノ酸23個より成る軽鎖と各々、360、342、299個のアミノ酸から成る重鎖が2つのジスルフィド結合で連結された構造を持っていることが判明した。
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