本年度の研究実施計画として、L-ミオ・イノシト-ル-l-リン酸シンタ-ゼ(MIPS)の免疫特異抗体の作成、酵素の生合成速度の検討、本酵素m-RNAの定量など蛋白、核酸レベルの研究から活性発現を明らかにすること目的として準備をし、前回に引続いてミオ・イノシト-ル(M1)欠如Mura-shige-Skoog培地から得られる大量の培養細胞(数Kg以上)を用いて精製・純化を試みた。しかし細胞内の酵素蓄積があまりにも微量で、単一の酵素を得ることができなかったため、最終精製標品(測定に障害を与える非特異的酸性ホスファタ-ゼをほとんど含まない)を用いて活性発現に関するいくらかの検討を行い、今後の研究進展の基礎となることを期待する。 (1)M1欠如培地にロ-グルクロン酸を添加して培養し、酵素活性の変化をみると、添加1代目より3代目の細胞では酵素の生合成は大きく抑制された。ロ-グルクロン酸はM1酸化経路において、ミオ・イノシト-ルオキシゲナ-ゼによるM1開裂反応の生成物であるが、この反応は検討したどの条件下でも検出されてない。 (2)培地に添加したM1による酸素活性の調節については、反応速度論的に検討した結果は、酵素の活性阻害ではなく、酵素分子の合成にM1が関与することが明らかになった。 (3)精製酵素は基質であるグルコ-ス-6-リン酸に対して極めて厳密な特異性を有し、また補酵素としてのMAD^+を反応系に加えなくとも、1mMNAD^+を含む完全系に対して15〜16%の活性を示し、EDTAに対する透析あるいは活性炭処理を行った結果も同様で、結合型NAD^+の存在が示された。 (4)MIPS活性は解糖系からのバイパスであるペント-スリン酸経路中間体のメンバ-によって著しく阻害をうけ、さらにこの系で作動するNADP^+NADPHなどとっても強い阻害をうけた。またSH試薬も著しい阻害を与え、活性中心に体する役割が示された。
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