今年度に行った研究により得られた知見・成果は以下の通りである。 1.コレステロール(CHOL)代謝に及ぼすTauとGlyの効果を詳細に比較検討した。CHOL添加食を与えたラットにおけるTauの血漿CHOL低下作用は主に胆汁酸の糞中排泄促進に起因していたが、Glyの血漿CHOL低下作用は必ずしも胆汁酸の排泄促進だけでは説明できず、他の機構も考えねばならないことが明確になった。 2.Metはある種の実験条件下において血漿CHOL濃度を上昇させることを著者らは見出しているが、この機作について検討する目的で、Met誘導性の高CHOL血漿に対する種々のメチル基アクセプターの影響を検討した。Gly、グアニジノ酢酸、ニコチンアミドなど主要なメチル基アクセプターはいずれもMetによる高CHOL血症を抑制することが認められ、Metの効果にはメチル基が関与していることが示唆された。Metのメチル基はS-アデノシルメチオニン(SAM)を経て種々の化合物に転移されるが、その反応の一つにホスファチジルエタノールアミンのメチル化によりホスファチジルコリン(PC)の合成がある。PCは肝臓から分泌されるリポタンパク質の主要なリン脂質であるところから、MetからのPC合成に及ぼす種々のメチル基アクセプターの影響を肝スライス系で検討した。その結果Glyをはじめとするメチル基アクセプターはMetからのPC合成を抑制することを認め、これが血漿CHOL上昇抑制作用と関係してと考えられた。 3.さらに2の点をより詳細に検討するため、PC合成系に関与する主な酵素の活性に及ぼすMet、Glyなどの影響を調べた。その結果、これらのアミノ酸の効果は酵素の活性変動を介してよりも、基質濃度の変動を介してPC合成に影響を与えている可能性が示された。この点については現在、更なる検討を続行中である。
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