高等植物はさまざまな耐塩性の仕組み(浸透圧調節、根によるイオンの選択的排除、塩脱による塩の排除、水分の損失を防ぐために気孔を閉じる)を持っている。この中で浸透圧調節機構は最も基本をなすものである。浸透圧調節は低分子有機化合物(ベタイン類、アシノ酸、糖)を合成蓄積することによって行われる。申請者らはこれまでにベタイン合成素の調節機構に関する研究を行ない以下のような結果を得ていた。 (1)大麦のベタイン合成酵素(ベタインアルデヒド脱水素酵素を精製し、分子量が60kDaのサブユニットからなる二量体であることが明らかになった。 (2)大麦のベタインアルデヒド脱水素酵素の組織局在性について研究を行い、本酵素は緑葉ばかりでなく黄化葉にも局在していこと。根の画分には、ベタインアルデヒドに特異的な酵素は検出できなかった。 (3)大麦緑葉のベタインアルデヒド脱水素酵素の蛋白質レベルは、塩ストレスにより誘導を受けた。 さらに、本年度は大麦緑葉のベタインアルデヒド脱水素酵素の抗体を用いて、in vitro translationを行い、mRNAレベルも塩ストレスにより誘導されることを明らかにした。本酵素のクロ-ニングを行っている。
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