葉緑体遺伝子の形質転換の可能性を探るために、葉緑体遺伝子を形質転換するためのベクタ-を構築するとともに、光独立栄養細胞への直接的遺伝子導入において不可欠の光独立栄養培養細胞からのプロトプラストの単離、培養条件を確立した。またこれら実験に平行して、さきに単離した除草剤抵抗性葉緑体変異株の解析を進め、新しい機能性変異を導入するための知見を得た。また、葉緑体変異を持つ光独立栄養培養細胞株からの個体再生のための条件を確立するために変異株プロトプラストと葉肉細胞プロトプラストの非対称細胞融合を行い、変異葉緑体をもつ個体の再生を試みた。その成果概要は以下の通りである。 1.葉緑体形質転換用プラスミドとしてpsbAのプロモ-タ-部分にカナマイシン抵抗性遺伝子(NPTII)を結合したキメラ遺伝子(pGSPK)を作成した。また葉緑体の形質を核支配の遺伝子として形質転換するプラスミドとして小麦のRuBISCO小サブユニットのプロモ-タ-、トランジットペプタイドをコ-ドする遺伝子部分にDIタンパク質の翻訳領域を結合したキメラ遺伝子プラスミド(pWSTPARK1)を作成した。 2.葉緑体遺伝子の形質転換系(直接的遺伝子導入系)の開発において不可欠の光独立栄養培養細胞からのプロトプラストの単離、培養条件を確立した。また、GUS遺伝子を用いたトランジェントアッセイにより遺伝子導入の条件検討をおこなった。 3.これまでに確立されたアトラジン抵抗性株の抵抗性の機構について解析を加え、D1タンパク質の立体構造の変化による抵抗性の獲得という新しい機構を明らかとした。 4.葉緑体変異を持つ光独立栄養培養細胞株からの個体再生法を確立するために変異株プロトプラストと葉肉細胞プロトプラストの非対称細胞融合を行ない、アトラジン抵抗性と考えられる再分化植物体を得た。
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