卵白タンパク質の生合成系での高次構造の形成機構を、精製タンパク質による変性→再生系と対比し、検討するため、両系の実験システムの確立を試みた。 まず、精製卵白タンパク質の実験系として、オボアルブミンとオボトランスフェリンに着目し、8M尿素、ジチオスレイトール存在下に、分子内ジスルフィドを還元し、変性させたのち、尿素を除去し、高次構造形成のプロセスを円偏光二色性スペクトルにより調べた。オボアルブミンでは、一次反応速度定数が0.05min^<-1>程度の遅い反応で、ほぼ完全にnative構造に再生するのに対し、オボトランスフェリンでは3.5min^<-1>以上の速い反応で再生するものの、その構造はnativeに比べ、部分的なfoldingに止ることが分った。また、オボトランスフェリンでは、native構造への完全な再生には、分子内ジスルフィド結合の形成が必須であることが明らかとなった。 一方、生合成系の実験システムとして、mRNAによるin vitroの翻訳系での解析を行った。即ち、メンドリ輪卵管より卵白タンパク質のmRNAを単離し、小麦胚芽タンパク合成系に添加することにより、in vitroでオボアルブミンを合成した。合成されたオボアルブミンの高次構造の解析法として、分子内ジスルフィド結合形成の電気泳動法による分析法を確立すると共に、トリプシンに対する抵抗性により、native構造の存在比が分析できることを明らかにした。
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