卵白タンパク質は、トリ輸卵管において生合成された後、高次構造の形成を完了し、細胞外に分泌されるが、本研究では、卵白タンパク質としてオボアルブミン、およびオボトランスフェリンに着目し、高次構造の形成過程らアプロ-チした。 タンパク質の分子内S-S結合は、水素結合、疎水結合、イオン結合などの非共有結合により形成された高次構造を安定化し、固定化するための共有結合である。そこで、卵白タンパク質(オボアルブミン、オボトランスフェリン)が分子内にSS結合を有する点に着目し、SS結合の形式を指標として、in vitroの翻訳系、および精製タンパク質による変性後の再生系を用い、卵白タンパク質の高次構造の形成プロセスを追求した。 オボトランスフェリンを8M尿素、ジチオスレイト-ル存在下に変性させたのち、再生実験を行った。その結果、有効な再生には2つのステップ (1.低温、変性剤非存在、GSH存在下でのインキュベ-ション、2.常温、GSSG存在下での再酸化)を経ることが必要であった。そこで、還元型オボトランスフェリンの低温下での状態が、一つの巻戻り中間体と考え、その構造を遠紫外のCDスペクトルにより調べたところ、native、変性のいずれとも異なるスペクトルが観察された。このスペクトルは温度変化に感受性が高く、従って中間体はモルテングロビュ-ル様の揺らぎの大きい、柔らかい構造をとることが分った。 一方、オボアルブミンを8M尿素で変性後の巻戻り再酸化を見た実験では、18時間で約40%のタンパク質が元の構造に回復した。また、輸卵管mRNAによる小麦胚芽系in vitroのタンパク合成系において、オボアルブミンの構造形成を調べたところ、変性後の巻戻り再酸化系と同様に、一部のタンパク質のみが、正しい高次構造を形成することが分った。
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