研究概要 |
糖蛋白質の細胞内転送機構は現在多くの関心を集めいる。その解析に際し、変異株を用いることと選択的な阻害剤を用いることが有力な研究手段として考えられる。酵母については種々の変異株が取得されているのに対し、方法的な制約から、動物細胞では限られた変異株しか取得されていない。選択的な阻害剤に関しては、イオノフォアの一つであるとモネンシンが頻用されてきたし、又、著者らが既に糖蛋白質の細胞内転送過程で粗面小胞体からゴルジへの転送の過程を選択的に阻害することを明らかにしてきたブレフェルジンAが関連研究者の関心を集めるに到っているが、阻害機構の多様性という点で選択的な阻害剤が望まれているのが現状である。なお、ブレフェルジンAは酵母においても、コアのグリコシル化を受けた状態で細胞内に蓄積することを明らかにした。 本研究は糖蛋白質細胞内転送の選択的阻害剤の検索を主たる研究目的とし、検索系については本研究が採択される以前に検討を加えていたので、それを用いて検索を行った。土壌分離菌約15,000株について検索したが、対象菌株数からも理解できるように、本年度は検索に主力をおいた。その結果、いくつかの有望菌が選択できたので、検索と並行して、活性物質の精製単離も行った。従って、本年度の当初の研究目的はほぼ達成できたといえる。単離した活性物質の物理化学的性質並びに生物活性については今後引き続いて検討を加えていくが、研究成果については、これら諸性質が明らかになった段階で発表する予定である。 当初の目論見どおりに糖蛋白質細胞内転送の選択的阻害剤を検索することが可能であると結論されるに至ったので、次年度も検査を続けて行くが、活性物質を単離して物理化学的性質を明らかにすると共に、その作用機序について解析を加えることに、研究の重点を移していくことを計画している。
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