研究概要 |
ホルムアルデヒドジスムタ-ゼ(FDM)は、酵素タンパク質にNAD(H)が結合したままで2種類の基質を同時に酸化還元する。この酵素はその触媒する反応が特徴的であるだけでなく、酵素タンパク質と補酵素NAD(H)との強い結合の点からも興味あるものである。本研究では、この酵素遺伝子をクロ-ニングし、その塩基配列からタンパク質の一次構造を推定してNAD(H)の結合領域の特徴を把握することを目的とする。 昨年度の研究で,FDM遺伝子を広域プラスミドベクタ-であるpKT230を用いてクロ-ニングしたが、これをさらにサブクロ-ニングし、3.2kbの挿入部を有するプラスミドpEC5を作成した。pEC5および同じ部位をpUC19に挿入したpEC21をそれぞれ形質転換したPseudomona putida TN1126およびE.Coli JM109では,ウエスタンブロット法でFDMタンパク質の生成が認められたが、E.coli JM109株では活性を示さず、P.putida TN1126株では親株F61の約1/100の活性が検出された。後者の無細胞抽出液よりFDMタンパク質を精製し,電気泳動的に均一な、比活性2.3U/mgの標品を21%の効率で得た。この精製酵素標品の比活性は親株F61が生産するFDMの約1/100であり、NAD(H)含量はサブユニットあたり0.02モルであり、F61の酵素の1/50であった。すなわち、組換え株はFDMタンパク質は合成するものの、菌体内のNAD(H)含量が低いために微弱な活性しか示さないものと考えられる。そこで、親株F61よりFDM^-株を誘導し、これを宿主菌としてセルフクロ-ニングをしたところ、高いFDM活性を有する形質転換株が得られた。これとは別に、精製FDMよりN-末端アミノ酸配列を決定し、それを参考にしてオリゴヌクレオチドプロ-ブを作製して数多くのクロ-ンを得た。これらは全て、FDMタンパク質を生産したが活性は示さなかった。この組換えプラスミドを用いて塩基配列を決定している。
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