微生物の糖代謝において、グルコ-スに生育せずフルクト-スに生育できる変異株を取得して、本菌の示す糖代謝について検討したところ、動物起項のケトヘキソキナ-ゼと同党の酵素が微生物にも存在することを見い出したことから本研究が開始された。新規な補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)の生成蓄積がメタノ-ル代謝と直接関係していることを明らかにする点からも重要な意味を有している。上記の変異株と同様な糖代謝を示す菌株の存在を広く検索したところ、かなりの高い出現率であらわれた。しかし、個々の解析は行わなかった。次にケトヘキソキナ-ゼの精製に着手した。24〜36時間フルクト-ス培地に生育させて得られる菌体を集め、フレンチプレスで細胞を破砕したのち、無細胞抽出液画分に本酵素を抽出した。酵素の精製にはブル-デキストランセファロ-スを用いるアフィニティ-クロマトグラフィ-が有効な手段であった。精製酵素は超遠心的にも、電気泳動的にも均一で、その等電点は4.5にあり、分子量は約6万で、分子量3万のサブユニット2量体であることを明らかにした。本酵は希薄な酵素液でもすぐれた耐熱性を示し、既報の動物起源の酵素に種々な性質で類似していた。微生物の酵素はかなりの割合でケトヘキソキナ-ゼ反応の逆反応を触媒することも明らかになった。ケトヘキソキナ-ゼ反応の次の段階の代謝系、アルドラ-ゼ、の精製に着手した。また、メタノ-ルの代謝系とフルクト-スの代謝系とが会合する会合点の調査も行った。グルコ-スに生育せずフルクト-スに生育できる理由の解明を行ったところ、細胞膜透過機構に依ることが明らかになった。なぜならば、細胞質内糖代謝に関係するほとんどすべての酵素は親株、変異株ともに等しく同値の酵素活性を示した。よって、本菌はフルクト-スの特異的バイオアッセイの被検菌として利用することが可能であることを示唆している。
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