研究概要 |
1.前年度に引き続き、阻害剤canavanineあるいは5-fluorouracilに対してそれらの細胞膜透過系の欠損によって耐性となっている酵母を用い、canavanineあるいは5-fluorouracilの共存下ではじめて抗酵母活性を示す物質を種々微生物培養液を対象に検索した。その結果、新たに土壌より分離した約1100種類の微生物のうち、放線菌の1株はそのような物質の生産菌として有望であるとみなした。2.本菌の同定研究は目下進行中である。3.本菌および前年度に有望とみなした糸状菌Penicillium sp.より目的物質を結晶状に単離し、それぞれchaininおよびanhydrofulvic acidと同定した。4.これらに前年度の研究で得たchrysodinおよびtetramycin Aを加えた4種の細胞膜作用性物質と、真菌類には効かない種々阻害剤との併用効果を調べた。その結果、いずれの細胞膜作用性物質もcanavanineや5-fluorouracilのみならず、いくつかの無効阻害剤を数種の真菌類において有効化しうることを認めた。従って、chrysodinらによる真菌細胞膜における透過性変化の誘導作用には特異性はないものと判断した。なお、いずれの細胞膜作用性物質も高濃度で使用すると、canavanine等の阻害剤の共存の有無とは無関係に、単独で抗真菌作用を発揮することを認めた。5.高濃度のchrysodin,tetramycin Aおよびchaininの抗真菌作用には種々細胞内成分の細胞外への漏出を伴うことがわかった。このことはこれらの物質は濃度次第では細胞膜に構造的な変化をおよぼす可能性のあることを示唆しており、現在電子顕微鏡でその確認を急いでいる。6.chrysodinについては感受性酵母においてリノ-ル酸およびリノレン酸の生合成を阻害することがわかった。従って、これらの多価不飽和脂肪酸は細胞膜の透過障壁機能において重要な役割を果していると推察した。他の細胞膜作用性物質の作用機構については目下検討中である。
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