研究概要 |
蛋白性αーアミラ-ゼ阻害剤Tー76ーIの一次構造を明らかにすると共に、構造遺伝子をクロ-ン化するための合成DNAプロ-ブを作製するための情報を得るため、部分アミノ酸配列を決定した。まず、T-76-Iを還元カルボキシメチル化した後トリプシン消化し、3種のペプチド断片をHPLCによって精製した。それぞれについて気相アミノ酸シ-クエンサ-で分析した結果、54アミノ酸残基を決定することができた。全アミノ組成の分析結果からT-76-Iは75〜80アミノ酸残基から成ると予想されることから約70%が決定されたことになる。決定されたアミノ酸配列の中で最も適当と考えられたN末アミノ酸配列に基づいてmRNAに相補的な29merの合成DNAプロ-ブを作製した。その際、コドンの第3文字はすべてイノシンとした。生産菌Tー76株の全DNAを調製し、種々の制限酵素で切断後合成プロ-ブとサザンハイブリダイゼ-ションを行った結果、約1.3kbpのSau3AI断片と強くハイブリダイズした。従って、Tー76株の全DNAをSau3AIで完全に消化後、1.0〜1.5kbpの断片を含む画分を回収し、pUC18のBamHI部位に挿入した組み換えプラスミドでB.coli DH5αを形質転換し、バンクを作製した。合成プロ-ブを用いたコロニ-ハイブリダイゼ-ション法によって検索した結果、約6,000株の形質転換株から5株の陽性株を取得した。それらの持つプラスミドは2種類の制限酵素切断パタ-ンを示し、さらに詳しい切断地図から約1.2kbpの同じ断片が互いに逆向きに挿入されていることが明らかとなった。挿入断片の全塩基配列を決定した結果、330bpから成る唯一のオ-プンリ-ディングフレ-ムが存在し、先に決定したアミノ酸配列と完全に一致する配列が見いだされた。また、Tー76ーIは、33アミノ酸残基から成るシグナルペプチドを持つ前駆体蛋白として合成されることが明らかとなった。
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