先年度に、K.marxianusのポリガラクチュロナ-ゼ(PG)遺伝子の発現をモデルにして、異種遺伝子産物を高生産するS.cerevisiaeの変異株SSM5を取得した。 本年度は、この菌株から自然変異によって、さらに異種遺伝子産物の生産能のすぐれた変異株SSM5-2を誘導し、その性質および異種遺伝子産物を高生産させるための要因について検討し、次の結果を得た。 (1)SSM5-2は、細胞膜中の脂質やステロ-ルの含量が親株と異っていた。また、従来の手法では形質転換であった。そこで、新しい手法について検討し、LiClとでメルカプトエタノ-ルアミンでコンピ-テント化して形質転換する方法を確立した。このことにより、SSM5-2を組換え遺伝子の宿主として利用出来るものになった。 (2)SSM5-2は、温度感受性変異株で37℃ではG_2期で生育が停止するG_2アレストの状態とることが見出された。また、3℃でも、PG遺伝子が高発現すると、G_2アレストが誘発されることが見出された。 (3)異種遺伝子の発現によって誘発されるG_2アレスは、培地中にCa^<2+>を添加することによって解除されることを見出した。すなわち、Ca^<2+>を10mM以上添加するとG_2アレストは解除され、PGの生産も著しく増加した。Ca^<2+>を100mM添加した場合、生育は抑制されたが、PGの生産は無添加の場合の約30倍に増大した。一般に、ベクタ-に挿入した遺伝子の発現はCa^<2+>の添加によって増大したが、SSM5-2の染色体支配の酵素の生産はむしろ抑制された。このような事実から、ベクタ-に挿入した遺伝子が発現する際には多量のCa^<2+>を必要とし、そのために細胞の増殖は抑制されるものと考えた。現在、Ca^<2+>がpG遺伝子の発現を制御する機構について検討を進めている。
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