研究概要 |
1989年6月〜11月にかけ、霞ヶ浦および手賀沼において水の華の原因藻類であるMicrocystis,Anabaenaの現在量の変化を調査した。霞ヶ浦においては初夏にAnabaenaが優占し、次いでM.aeruginosaが、また秋期には有毒藻のM.viridisが優占し昨年と類似した種の変遷が観察された。手賀沼にはM.viridisは出現しなかった。 M.viridis,M.aerugionosaおよびM.wesenbergiiの生理学的特性の相違を明らかにすべく光合成活性について検討を加えた。光合成活性は酸素電極法を用いて測定し、照度と温度の影響について調べた。単位藻体当りの光合成活性は、いずれの株も、15,000lxで最大を示し、M.virides,M.wesenbergii,M.aeruginosaは2.0、3.0、6.0μmolO_2・mg dry cell^<-1>・h^-でM.viridisが最も活性が低かった。しかし、chlorophyll a 当りで表示すると、いずれの株も200〜300μm mol・0_2・mg dry cell^<-1>・h^<-1>の範囲であった。光合成活性に及ぼす温度の影響試験の結果、M.aeruginosa,M.wesenbergiiは35°Cで最大の活性を示したが、M.viridisは20〜30°Cで最大の活性を示し有毒藻は他の藻より低温を好むことが明らかとなった。 霞ヶ浦、手賀沼の湖水について、M.viridis,M.aeruginosa,A.spiroides,A.affinisを用いて藻類増殖の制限栄養物質について検討を加えた。夏期においては、Microcystisの制限栄養物質はリンであることが多いが、全期間を通じ鉄やEDTAを添加すると増殖が異常に増大する傾向が認められ、鉄やキレ-ト物質が制限栄養物質になることを示唆された。Anabaenaについてはリンを共存させても藻類の増殖が認められず、リンとEDTAを共存させると増殖が異常に増大する現象が認められ、キレ-ト様物質の増殖促進効果が顕著に認められた。異常増殖を解明する上で、キレ-ト物質の役割が重要と考えられ、キレ-ト物質の効果は、Microcystis,Anabaena等のラン藻に特異的に作用するものと考えられた。
|