1.タンパク質の糖による重合と架橋構造の解明:タンパク質としてリゾチーム、オボアルブミン、血清アルブミンを用い、還元糖と生理条件下(37℃、pH7.4)で反応させたところ、すべての反応系において、リジン、アルギニン残基の損傷とタンパク質の重合が認められた。この反応系で生成する主要なカルボニル化合物は3-デオキシグルコソン(3DG)であった。3DGはアルギニン、リジン残基との反応性およびタンパク質の重合活性も高いため、クロスリンカーの主要な中間体であると推察した。 2.蛍光物質の解明:モデル系としてブチルアミンとグルコースを生理条件下(37℃、pH7.4)で反応させ、2種の主要蛍光生成物(FA、FB)を逆相系HPLC等で単離、精製した。これらは分子量398で240、278、370nmにUV吸収を、励起波長379nm、蛍光波長462nmを有する類似の蛍光物質であった。そこでFAを^<13>CNMR、HNMR等から解析し、分子式はC_<20>H_<30>O_6N_2でヘテロ還化合物であることが推定された。FAはグルコース2分子とブチルアミン2分子よりなり、タンパク質のグリケーションによる重合において、リジン残基間に生成する架橋構造の可能性を示唆した。 3.食品系におけるメイラード反応生成物の免疫学的検出、定量:メイラード反応の主要生成物の一つであるピロールアルデヒド(PA)は3DGとリジンのε-アミノ基の反応で生成し、架橋にも関与していると推定される。そこでPAをグルコースと6-アミノカプロン酸から合成し、これをハプテンとし、カルボジイミド法によりポリリジンとカップリングさせた。これをウサギを用い、免疫を行って抗体を得た。PAに対する有用な抗血清は16〜18週で得られた。この抗体はPAのほかにN-置換PA化合物に交差反応性を示したが、フラン類には全く示さなかった。BSAとグルコースをpH7.4、36日間インキュベートした褐変BSA中のPAの生成量は1日後の2.5pmol/mgから36日後では30pmol/mgに増加した。
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