研究概要 |
ブラシノステロイドは近年注目されつつあるステロイド性の植物ホルモンである。しかしながら、その本質的生理作用は未だ明らかにされていない。本研究ではこの点を解明するためにブラシノステロイドに拮抗的に作用する化合物の作出を目的とする。抗ブラシノステロイドは植物調節剤・除草剤として利用できる可能性も有しており、その基礎および応用分野における利用価値は重要である。筆者らは天然ブラシノステロイドの構造活性相関研究により、2β位の水酸基が著しく活性を阻害することを見いだした。この原因に対する1つの仮説としてブラシノステロイド-レセプタ-複合体の誘起する生化学的反応が2β位の置換基により阻害されると考えた。この仮説に従い、2β位またはその近傍に適切な置換基を導入することにより拮抗作用を誘導できると考えられたので、スチグマステロ-ルを出発原料として以下の2種類の化合物の合成を行った。 1.A環にメチル基を有する化合物の合成.スチグマステロ-ルより8段階の反応で、6,6-ethylenedioxystigmast22-en-3-oneに変換したのちリチウムジイソプロピルアミド-メチルイオダイドと反応せしめて2α-モノメチル体、2,2-ジメチル体、2α、4α-ジメチル体を得た。現在、これらメチル化体に既知の方法で22R,23R-水酸基を導入しているところである。 2.A環にチイラン環を有する化合物の合成。スチグマステロ-ルより数段階をへて22S、23S-dihydroxystigmast-2-en-6-oneを合成した。現在2位の二重結合を足がかりにして、2、3-チイラン体を合成中である。 以上のように、最終目的物までにいたっていないが、得られる化合物については近々抗ブラシノステロイド活性を測定する予定である。
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