動物の細胞表層に局在し、細胞間認識、コレラ毒素をはじめとする毒素のレセプタ-、ホルモン、ウィルス、細胞などのレセプタ-機能の外に細胞の分化誘導、各種の抗原性発現等多彩な生物活性を発現するシアロスフィンゴ糖脂質である分子種ガングリオシドの機能を分子レベルで解析することを目的として研究を開始した。ガングリオシドは分子多様性であり、その構成成分であるシアル酸、セラミド及び各種オリゴ糖鎖の特定の位置での立体特異的な結合からなっている。合成化学的見地からみて、最も合成上困難とされていた点は、シアル酸のオリゴ糖鎖の特定の位置における α-配糖体の合成法の発見と、分子多様性の分子を、如何にして単一化合物として合成するかを考えることである。まず第一の問題点は、シアル酸のC-2位にS-メチル基をα-グリコシドとして導入し、グリコシル化剤としてDMTST(ジメチルメチルチオ-スルホニウムトリフレイト)を使用し、グリコシルアクセプタ-はシアル酸のアノメリック位が立体的に込み入っており、さらに4級炭素原子である。またC-3位がデオキシ体で容易に2、3-デオキシ体が生成されることが予想されるので、C-2、3、4位遊離のガングト-ス、ラクト-ス誘導体を合成した。シアル酸のアノメリック効果を想定し、アセトニトリル中で縮合反応(-15℃)を行ったところ、目的とするα-配糖体が特異的に合成された。ついでC-1位の保護基を選択的に除いたのち、D-キシロ-スから合成したアジドスフィンゴシンをイミデ-ト法にてB-グリコシドとし、アジト基をアミノ基とし、各種の脂肪酸を導入したのち、全ての保護基を加水分解し、目的とするガングリオシド類を全合成することに成功した。さらにこの合成法を応用して、より複雑な構造を有するラクト、グロボ及びネオラクトシリ-ズのガングリオシドの系統的合成法を検討した。
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