研究概要 |
1.哺乳動物の細胞表層に広く存在するN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)の2-β-SNa体と、シチジン、デオキシシチジンおよびアラビノシルシトシンとを、2種類のスペ-サ-[(a)-SCH_2O-,(b)-SCH_2CONH-]を介して結合させ、対応するCMP-Neu5Ac誘導体・類縁体へと導いた。スペ-サ-(a)を有する化合物は、各ヌクレオシドの5'-0-メトキシエトキシメチル誘導体から、またスペ-サ-(b)を有する化合物は、対応する5'-N-クロロアセチル誘導体から合成された。これらの化合物には、Neu5Acシンタ-ゼやNeu5Acトランスフェラ-ゼの阻害作用が認められ、今後、複合糖質の糖鎖機能に関する本態的研究への応用と共に、制癌、抗ウイルス作用などの生理活性が期待されている。グラム陰性菌の細胞表層に存在する2-ケト-3-デオキシオクトン酸(KDO)に関しては、スペ-サ-を-0-,-S-,-SCH_20-および-SCH_2CONH-としたCMP-KDO誘導体・類縁体を合成し、その酵素阻害性と生物活性発現の有無について検討を加えている。 2.グルコシダ-ゼ阻害剤1-デオキシノジリマイシン(DNJ)をリ-ド化合物として、対応するグルコサミン型(GlcNAcDNJ)、マンノサミン型およびガラクトサミン型DNJを合成した所、予想通りN-アセチルヘキソサニダ-ゼ阻害活性を発現した。さらにDNJおよびGlcNAcDNJを含む各種二糖類、Galβ(1→4)DNJ、Galβ(1→3)DNJ、Glcβ(1→3)DNJ、およびGalβ(1→4)GlcNAcDNJ、Galβ(1→3)GlcNAcDNJ、およびGlcNAcβ(1→4)GlcNAcDNJの合成に成功した。即ち、対応するグルコシルブロミドまたはメチルチオグリコシドをドナ-とし、DNJのN-BocまたはN-Z誘導体をアクセプタ-として縮合を行った。中でもGalβ(1→4)、Calβ(1→4)GlcNAcDNJ及びGlcNAc(1→4)GlcNAcDNJは、広く糖脂質、糖蛋白質に含まれる重要な糖鎖ユニットの類縁体であり、糖鎖プロセシング阻害をはじめとする新しい生理活性が期待されている。
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