有糸分裂をはじめ多くの生命現象に関与している微小管の機能発現機構は依然神秘的で不明の点が多い。今年は、微小管重合制御物質の検索を放線菌代謝産物中に求めた。新しく開発した雌核雄核融合試験を微小管重合制御の指標とし広くスクリーニングを行った。その結果、中国山地の土壌より分離した1放線菌株(Streptomyces sp.2388株)に著しい雌核雄核融合阻止活性を認めた。スクリーニング方法としては、ウニ卵と精子を試料の入った海水に入れ、受精後の雌核雄核の挙動を蛍光染色法を用いて解析した。 放線菌2388株をジャガイモ寒天培地を用いて大量培養し、得られた培養液を酢酸エケル抽出し、種々のカラムクロマトグラフィーを繰返すことによって3種の活性成分を分離することが出来た。化合物Bは、5μg/mlの濃度で雌核雄核融合物に必須なネットワーク(微小管網)を破壊した。各種機器分析により、本化合物は、二種の幾何異性体であることが分った。各々の^1H-NMRより、B_1を3Z-6Zアルボヌルシン、B_2を3E-6Z体アルボヌルシンと決定した。また、化合物Cは、化学反応を用いた誘導体化によって、新規物質であることが判明し、ストレプトパイロンと命名した。化合物Cは、5〜10μg/mlで効果的に核融合時の微小管ネットワークを破壊する。また、化合物Aの構造については、目下、検討中である。 本研究は、平成元年度も継続されるため活性物質の作甲機作も含め一層の研究の飛躍が期待できる。今回、確立した生物試験法を用いて引き続き活性物質の検索を行い、それら活性成分の化学的性状を明らかにしたい。
|