ウニ胚において、シングレット微小管は分裂装置の形成と受精直後の雌核雄核融合の2つのイベントに深くかかわっている。これら微小菅の関与する事象は、それぞれ高分解能偏光顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いることで明瞭に視覚化することができる。紡錐体の形成過程のみ阻害する物質の検索法はウニ胚精密in vivo試験法として確立している。平成元年度は、雌核雄核融合阻害試験を駆使し、土壌由来の放線菌培養液の中で最も強い活性の認められたKO2388株の活性成分を明らかにすることができた。本菌株は2種類の新規活性物質を生産していることが明らかとなった。前年度、紡錘体形成阻害試験を用い詳細に阻害機構を解析し、我々がバクテリア及びカビの代謝産物から単離したT-1、Curvularinは中心体を標的とし、タル型紡錘体を誘導する特異な活性を示しことを見いだした。本両化合物を用いて、有糸分裂機構に関与する微小菅の役割について多くの貴重な知見を得ることができた。今年の中心課題は、微小菅配向過程に作用する新たなタイプの活性を示す特異な微小菅配向制微物質を見いだし、その性状解析を行うことであった。その結果、土壌から分離したカビの培養液中からharveynoneらの新規薬剤を開発することができた。また、核蛍光染色により新たに確立した生物試験法を用いて、有糸分裂を阻害する最低濃度と同レベルで雌核雄核融合を抑える化合物albonoursinと雌核雄核に関与する微小菅に特異的に作用するstreptopyroneを発見することに成功した。これら試薬は雌核雄核融合過程における微小菅機能に関する新たな知見をもたらすことができよう。また、得られた化合物と既存の紡錘体毒をウニ胚を用いた各種の精密生物試験を用い詳細に解析し、今まで不明瞭に一つにまとめられていた微小管機能の新しい分類の礎を築くことができた。
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