研究概要 |
1.Bacillus cereus JCM2152株より分離した温度感受性変異株M-4を用いて実験を行った。M-4を30℃で培養後、対数期に42℃で2時間培養してDNA複製を一旦完了させた。DNA複製開始を同調するため、これを再び30℃で15分間培養した後、更に42℃で培養することでDNA複製を同調できた。このDNA複製開始より細胞を芽胞形成培地に移し、芽胞形成率を調べた結果、DNA複製開始直後には20%であった芽胞形成率が、複製開始から30〜40分後には100%と最高となり、80分後には再び15%へと低下した。この結果より、DNA複製開始より約30分後の複製途中の菌だけが、芽胞形成培地にある時、芽胞形成できるものと考えられる。 2.B.cereusからのクロモソーム調製法は未だ確立されていないので、クロモソーム調製法について検討した。菌体を先ずリゾチーム10mg/mlとムタノリシン0.1mg/mlで4℃、1時間処理した後、Briji58及びデオキシコール酸で23℃、40分処理した。これに0.2MになるようにNaCl溶液を加えて溶菌し、4,000Xg、5分の遠心で残査を除き、上清を25,000Xg、20分遠心し、沈澱をクロモソーム画分とした。クロモソーム画分はA_<280>/A_<260>=0.85であり、大腸菌クロモソームについての報告(A_<280>/A_<260>=0.6〜0.89)と近い値であったのでクロモソームが調製できたと考えた。 3.DNA複製開始より0、30、80分後に集菌した菌より各々2.の方法でクロモソームを調製し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によりクロモソーム結合蛋白質の比較を行った。(1)芽胞形成の高い時期のクロモソームからのみ検出されなかった蛋白質として140KD、62KD、35KD、26KDの蛋白質があった。(2)逆に、芽胞形成率の高い時期のクロモソームからのみ検出された蛋白質は65KD、55KD、46KD、42KD、38KDであり、(1)は芽胞形成のリプレッサー、(2)は芽胞形成期に特有のRNAポリメラーゼのσ因子である可能性が考えられる。
|