日本林政の現状について評価をおこない、わが国林政が転換期にあることを明らかにした。それは経済社会の発展の結果として、これまでのような木材生産を基軸とする林政のあり方が転換を余儀なくされるとともに、日本林政の基軸に位置していた国有林経営の縮小と再編が進んでいることに端的にあらわれている。しかし他方で地球環境問題の生起にともない、森林・林政にたいし新たな課題が付与されてきているのである。 ところで1985年9月から急激に進行した円高と86年4月の国際協調のための経済構造調整研究会のレポ-トを契機とする産業調整政策の実施によって、北海道林業には様々な動向がみられるが、それを整理して提示すると、第1に外材の輸入量が増加して、木材の自給率がふたたび減少していることである。そして重要なことは針葉樹用材について外材は補完材としての位置を脱し、すでに価格を規定するに至っていることである。第2に70年代初頭以降の展開を基礎にして、北海道の住宅は住宅メ-カ-、ホ-ムビルダ-によってつくられるという構造が80年代中葉までにできあがったことである。かれらは住宅建築のト-タルコストの引き下げのために、製材をはじめとする住宅資材の流通合理化に積極的に取り組んでいる。第3に円高は労働力を雇用する国有林や道有林の経営に影響を与えるとともに、国有林と道有林の経営規模の縮小をもたらしている。第4にリゾ-ト開発がおこなわれている地域の林地移動が進むとともに、林業不況にともなう民有林管理の粗放化が進んでいる。 林政はこうした北海道林業の動向をふまえながら、林業振興、森林の新たな利用と保全に創造的に取り組む必要がある。
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