本研究の目的は、我が国の伐出作業にはたす役割が今後ますます重要視されるであろう林業用車両の傾斜林地走行に対する安定性の解析を行い、安定性理論の体系化と現用車両の安定性走行に対する作業基準を検討することである。 これまでの研究で得られた結果をまとめると、以下のとおりである。 1.林業用車両は、車両構造の特性特に形態学的仕様と目的とする作業機能を組み合わせることにより、スキッダ形、小形運材車形(ホイ-ル):ミニフォアワ-ダ形、小形運材車(クロ-ラ):農業用トラクタ形、モ-ビルヤ-ダ形に分類される。2.このなかで、将来中心的役割をはたすであろうミニフォアワ-ダ形車両について静的安定性の試験・解析を行った結果、木材の積込み・荷卸し時のアウトリガの必要性があらためて認識された。また、最大安定傾斜角は29〜33度、限界登坂角は20〜25度であった。3.ミニフォアワ-ダ形車両が林地、集材路、林道を空車と実車で走行した場合の車体傾斜角を測定した結果、揺動角が最大になるのは林地の場合で、前後方向で14〜21度、左右方向で12〜17度であることがわかった。4.装輪式の林業用車両の作業基準などを定める場合には静的安定角に揺動角を考慮した限界角を求める必要があるが、左右方向の限界角の目安として集材路および林道で19〜24度、林地で9〜12度という値が得られた。5.車両の動的解析では、タイヤ、車体のけん架装置などのバネ系の特性が重要な意味を持つが、これらのバネ特性の試験やその他慣性モ-メントの解析法を含めて車両運動の総合的な動力学的解析については今後の課題として残された。
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