1.全建総連において大工・工務店の全国的動向に関する調査を行い、さらに沖縄県での戦後の著しい木造率減少過程とその要因について、木造先進地域の山形県(鶴岡市、温海町)との比較で歴史問分析を行った。 2.1990年度中に山形県内(鶴岡市)、沖縄県(那覇市、名護市)、北海道(札幌市)などで行った木造在来工法に関する比較実態調査によれば、国産材中心の資源立地型の地域では施主の強い国産材指向を背景に、在来工法に対する指向が相対的に強い(鶴岡市に見られる地域住宅市場の展開)。つぎに非木造・非資源立地型の地域では建材業の主導する地域ホ-ムビルダ-の展開の中で、大工・工務店の手間受け・下請け化が展開し、大工・工務店の実質的な建設労働者化が進行しつつあり、在来工法の技術的基礎が弱体化し、伝統的住文化は基本的に解体した(那覇市、名護市)。さらに、木造・非資源立型の地域(札幌市)では、非在来工法による大手メ-カ-の進出により、大工・工務店の存立が危うくなり在来工法離れが一層激しくなっている。 3.大工・工務店の協同化については、木造地域では資源立地型の地域で取り組みが相対的に強く(鶴岡市)、下請け型および非資源立地型の地域ほど取り組みが弱いことが明らかになった(沖縄県、札幌市)。資源立地型の鶴岡市では、協同組合と中小商工業者(大工・工務店)間の事業提携による住宅供給が進みつつあるほか、労働組合による建設労働者の組織化も展開している。一方、木造率が1%に満たない非木造地域の沖縄県では、建設労働組合の組織力も弱体化し、大工・工務店の自営業者としての組織化も進んでいない。 4.内需拡大政策に伴う建設労働者不足は、地域資源立地型住生活の担い手である在来工法技術教育の形骸化、空洞化を顕著にさせ、大工・工務店の経営危機が引き起こされている(札幌市、那覇市)。
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