1.第1次オイルショック以降の木造建築に対する再評価は、木材の合理的な利用に基づいた日本のみならぬ世界的な傾向である。また、そうした傾向の技術的な根幹は日本と同様の在来工法に基礎を置いている。 2.しかし、わが国では、大手住宅メ-カの押し進める住宅産業化の中で、伝統的な住宅建築方法が解体され、在来工法を支えてきた大工・工務店の受注不足による経営危機が持たらされている。 3.しかも、わが国では、1985年以降の建築市場の拡大の中で、建築労働者の不足が著しくなり、従来の危機に加えた新しい危機が顕在化し(受注があっても人手を大手メ-カ-に取られて建てられない)、後継者不足が激しくなっている。 4.日本林業を支える在来工法は、こうして危機的状況にあるが、それは地域性を持ちつつ展開している。危機を先取りした沖縄県では木造率はコンマ以下であり、木造復権の可能性は、消費者サイドや、すでにいないといわれる大工・建設者サイドでも困難と認識されている。山形県では、木造率が高いが、大手メ-カ-の進出も進みつつあり、沖縄県の状況は山形県の将来を示すものといえよう。今後、在来工法を発展させるためには、その担い手である大工・工務店の経営を守り発展させ、後継者不足を根本的に解決させることが必要である。また、大手メ-カ-に対する民主的な経済的規制を実行し、住宅市場を大手メ-カ-主導の歪んだ「全国的住宅市場」から変革し、地域資源に立地した「地域住宅市場」の構築を実現することが必要である。そのためには地域の消費者、建設者等の協同が必要であるといえよう。新たな協同組合運動の中で、非営利的な部門として、住宅供給が行われる必要があるし、その条件は各地の取り組みの中で生まれつつある。
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