新潟、山形、秋田各県の健全な海岸マツ林および一部マツ枯れ進行中の林分等、数林分について、植生調査を行った。健全なマツ林へ自然侵入した広葉樹のうち、高木性のものではナラ類(コナラ、カシワ、ミズナラ等)が、小高木性のものではサクラ類(オクチョウジザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ等)を中心に、ヤマウルシ、ヌルデ等がいずれの林分でも認められた。また、混植されたニセアカシアが急激に分布域を拡大し、優占してしまう林分もみられた。 植生調査した林分の中から、新潟県村上市の海岸アカマツ林に固定試験地を設定した。当初の計画に従って、林内環境とくに照度計を使った林内の照度分布を調べ、侵入広葉樹の林内での分布、結実、発生した実生稚樹の動態、藩種実験等を行った。種子散布と散布者としての動物類の調査としては、シードラップによる自然侵入種子の捕捉、埋土種子の分類およびシャーマントラップを使って野ネズミ類の生息状況調査を行った。さらに、侵入広葉樹の生理的特性を明らかにするために、主要樹種の土壌水分-光合成特性の予備実験等を実施した。 以上の結果から、海岸林へのナラ類の侵入が野ネズミ類(アカネズミ、ヒメネズミ)などの隠匿散布によって、ホオノキなどの高木性樹種のに他コシアブラ、ヤマウルシ、サクラ類などの侵入が鳥散布によって、それぞれ行われている可能性が強いことが明らかになった。さらに、マツ林の林齢が高い林分では、これらの樹種が定着し、すでに母樹として機能している場合もある。とくに、ナラ類では小サイズ(樹高1m以下)でも発芽力を有する種子を生産してる固体のあることが確認された。また、アカマツ、コナラ、ヤマウルシ、オクチョウジザクラ、4樹種を用いた土壌水分-光合成の予備実験の結果からは、水ストレスに対する各樹種の反応性が異なることが示唆された。
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