研究概要 |
木曽赤沢ヒノキ林の5林分に設定されたプロット(50m×50m)内で、上層木(dbh≧20cm)、下層木(dbh≦20cm,height≧1.3m)、稚樹・実生の動態の調査を5・7・10月に、種子生産・リタ-フォ-ル量の調査を5ー10月の各月に行い、また、実生の生育する林床の光・温度条件の把握を行った。上層木の1985ー1990年の期間中の枯死率はヒノキ1ー3%、アスナロ8%で、サワラは枯死個体がなかった。この期間中の年平均直径生長(cm)は、ヒノキ0.3ー0.7、サワラ0.6、アスナロ0.3ー1.2であった。1985年の生存木の胸高直径分布の形状は1990年においても維持された。下層木の枯死率は8.3ー22.9%で、その内でヒノキは枯死率個体がなく、サワラ11.1%、アスナロ12.2ー20.9%、広葉樹13.6ー40.0%であった。1990年における新規発生実生は、ヒノキ、サワラともに林分、基質状態の違いにかかわらずきわめて少なかったが、撹乱を受けた林分ではやや多かった。アスナロの新規発生実生はまったくなかった。設備備品のSun station systemによる5ー6月ならびに7ー9月の林床の積算日射量(MJ)は、下層広葉樹のヒノキ林36.8,31.8、下層アスナロのヒノキ林11.5ー12.7,5.4ー13.3、サワラ・広葉樹混交林81.1,36.3、被撹乱林分354.5,336.2でアスナロが下層を優占する林分の林床の積算日射エネルギ-はきわめて低く、これがヒノキ実生の生存率の低い原因と考えられた。1989年10月から1990年5月までの林床の最低気温は-7.0ー-9.0C、5ー6月の最高気温は18.0ー26.0であった。別に設定された4haの永久プロット内のdbh≧5cmのすべての樹木の毎木調査によると、ヒノキ・サワラは連続した二山型、ミズナラは不連続な二山型を示したが、アスナロは小径木に極端に偏った逆J字型の幹胸高直径分布を示し、樹種による更新・再生特性の違いを現しているものと推測された。
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