研究概要 |
木曽ヒノキ林を代表する赤沢ヒノキ林で、上層と下層の異なる4林分と撹乱を受けた1林分に設定された固定プロットにおいて、林分構造と更新動態に関する研究を1985ー1990年の期間行った。ヒノキ優占林分の上層木(dbh≧20cm)のdbh分布の形状は正規型、サワラ-広葉樹優占林分のそれは逆J字型で、5年間変化しなかった。上層木の枯死率は、ヒノキ優占林分では1.3ー3.1%であったが、サワラ-広葉樹優占林分では枯死木が出現しなかった。下層木(dbh<20cm,H≧1.3m)の枯死率は8.3ー22.9%で、アスナロの枯死率は12.2ー22.9%であった。実生の発生数には年変動が見られ、ヒノキは1986・1989年、サワラは、1987・1989年に多く、撹乱林分の鉱物質土壌上で特に多かった。実生の生存率は、閉鎖林冠下では根株や倒木上で高かったが、撹乱林分での方がより高かった。種子生産量には年変動があり、ヒノキは1988年度の4,479seeds m^<-2>、サワラは1986年度の4,324seeds m^<-2>が最大値であった。また、落葉量はヒノキ優占林分で約3ton ha^<-1>yr^<-1>であった。4haの永久プロット内でのdbh≧5cmの全樹木の毎木調査より、総出現本数は7,186(うち枯死木は718本)本で、幹直径分布の形状は、ヒノキ・サワラは連続した二山型、ミズナラは不連続な二山型、アスナロは小径木に極端に偏った逆J字型を示した。空間分布は、ヒノキでは上層木は均等もしくはランダム分布であったが、下層木は集中分布を示し、ギャップ更新していることが示唆された。アスナロは上層木はほぼランダム分布であったが、下層木はほぼプロット全域に多数出現し、ランダムに近い集中分布を示した。サワラは上層木はランダムに近い集中分布を、下層木は集中分布をした。陽樹のミズナラは上層木の本数はきわめて少なく分布の傾向は不明確であったが、下層木は集中分布し、ヒノキと同様にギャップ更新しているものと考えられた。
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