スギ針葉に含まれるジテルペン成分と培養組織の成長、分化、ならびに成分代謝の関係を明らかにするため、次の実験を実施した。 1.カルス培養最適条件の確率の為、(1)基本培地組織(MS、WSおよびポテト抽出物(P))、(2)各種植物ホルモンの組成、(3)外植体の採取時期、殺菌方法を検討した。その結果、野外のスギ成木を利用する場合、11月から翌年5月までの摩耗、茎頂より採取した組織片をアンチホルミン、滅菌水、エタノールで順次、殺菌後、2ppmのα-ナフタレン酢酸(NAA)、3%ブドウ糖および1%寒天を添加したMS培地上に置床すれば、白色泡状の良好なカルスが得られた。WS培地は、成長が悪く、P培地は褐変老化が早い。6〜10月の間、採取した試料は、カルスの成長も悪く、雑菌による汚染が著しい。外植体の種類によりカルス成長に難易があるが、ジテルペンや形態の違いとの間に、一定の関係は認められない。2.カルス代謝物の分析の為、上記寒天培地ならびに液体振盪培地での培養を実施した。カルス組織のn-ヘキサン抽出物のクロマト分離とがスクロ分析を実施。その結果減針葉のジテルペン組成マンガン酸かり酸化は、原針葉に較べ、カルスの方が純粋なリグニン成分をふくんでいることを示した。液体振盪培養は、短期で増殖しうるが、成長量に限りがあり、二次代謝物は、僅少であった。3.カルス組織の再分化条件を1と同様に検討した。原植物体の種類により難易はあるが、NAA又はNAAとベンジルアミノプリン(BAP)含有希釈WS培地植え、光照射下に保てば、根あるいは葉原基が形成されることを確認した。分化細胞は、いずれも矩形で木化した細胞壁を有していた。完全な植物体にまで成長させるには、まだ、至っていないが、スギのカルス培養実現の可能性と問題点が明らかになった。
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