刃物の進行方向に対して繊維方向が傾斜した場合の、木材の割裂型切断に関して、本年度は繊維傾斜角10°のものを中心に行なった。前年度用いた、20、30、40°のくさび型の刃物形状は木材に過度の変形を与えて不都合であったので、刃先角20°、厚さ3mmの両刃のものとした。試験体の寸法は2cm(厚さ)×4cm(幅)×10cm(長さ)である。また側方からの負荷は前年度の全面圧縮に加えて、刃物とともに移動するキャタピラを用いた部分圧縮方式の治具を開発して実験を行なった。得られた結果は以下のとおりである。1.全面側方圧縮において、切断が繊維方向と関係なく、かつ不都合な割れを発生させずに刃物方向に行なわれるためには、側方圧縮力の方向よりも、側方圧縮力の大きさの方が影響が大きかった。また切断表面の性状も、角度のみを変化させた場合には大差が生じなかった。したがって側方圧縮力の方向を変えることのみでは刃先の応力状態をコントロ-ルすることは困難であると考えざるをえない。2.部分圧縮による実験では良好な切断面を得ることができなかった。これは繊維方向の割れを防ぐためには全面圧縮よりも大きな側方圧縮力としなければならず、圧力を受ける部分の塑性変形が大きくなり過ぎてしまうためと、部分的に押すために外側に凹の曲げ変形が生じるため、刃先で繊維に沿って割れてしまうためである。3.有限要素法による弾性解析、弾塑性解析を行なって刃先近傍の応力分布を求めて比較した。その結果、木材に側面からさまざまな力を作用させて応力場を変化させるのは、作用点から目的の箇所までの間に距離があるとあまり効果がないことが判明した。したがって割裂型切断が有効なのは比較的薄めの板を対象としたノ-ズバ-を用いるスライサ-型式のものか、刃物の周囲を何らかの手段で軟化させることができた場合であろう。
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