本研究の目的は、木材において刃物の進行方向に対して繊維方向が傾斜している場合でも、応力場をコントロ-ルすることにより割裂型の切断をすることが可能であるか否かを検討することにあった。供試材はスプル-スで、切断には刃物角20°、厚さ3mmのくさび型刃物を用いた。任意の角度で側方圧縮力を負荷出来るように、油圧式の加力装置を作成して用いた。1.側方全面圧縮による割裂型切断試験を行なって以下の結論を得た。1)繊維傾向を持つ材でも、側方全面圧縮力を加えることにより、割裂型切断が可能である。2)側方全面圧縮力を作用させる場合、その角度よりも大きさの方が、被削材の品質におよぼす影響が大きかった。3)塑性を考慮した有限要素法によるシミュレ-ションで、Tsai-Wuのインデックスを用いると、切断結果を比較的よく説明できることが分かった。2.また側方部分圧縮による割裂型切断試験を行なって以下の結論を得た。1)側方部分圧縮では、良好な割裂型切断はむずかしい。2)側方部分圧縮では、刃先まで必要な応力を伝えることが出来ないことが、有限要素法による数値計算で確認出来た。3.刃先先端におけるき裂の進行方向は線形破壊力学で予測することは困難であり、木材の異方性を考慮に入れた塑性破壊のクライテリアを検討する必要があった。 以上の結果から、本切削方法を実用化する際には、繊維走行を測定しながら刃先の応力分布を変化させる必要はないことが判明した。また長軸材では部分圧縮は必須であるが、その場合には刃先まで十分に応力が伝わるように、圧縮面積を大きくとる必要があると思われた。刃物周りでの塑性変形はかなり大きいので、これを少なくするためには、刃物の厚さを薄くする必要があるが、刃物にかかる外力は大きいので、刃物にテンションをかけて変形や破損を防ぐ必要があろう。
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