塩化リチウム・ジメチルアセトアミド系にセルロースを溶かし、スルフリルクロリドとピリジンでクロロ硫酸エステル化を試みたが、溶剤が凍結するため-30℃以上の範囲でしか反応は行えなかった。-30℃では、クロロ硫酸(CS)基の置換度(DS)1.3の誘導体が得られた。しかし、同時にこの基の塩素による置換も避けられず、塩素の置換度は0.8に達した。反応温度を20℃まであげるにつれてCS基のDSは0.8に低下し、一方、塩素のDSは1.8に達した。この塩素のDSは今までに報告された中で、最高の値である。なお、温度を20℃以上にしても、塩素のDSは変わらなかった。CS基をNaI処理で脱離させて得た塩素化セルロースについて、加水分解とその生成物のg.l.c.分析によって調べた結果、塩素化はまずC6位に起こり、ついでC3位にワルデン反転をともなって起こることが明らかになった。また、CS基をサルフェート基に変換することを目的としてアルカリ性水溶液処理を行ったが、生成したのはサイクリックサルフェート基であった。 CS基と塩素基の両方を持つセルロース(DS:Cl、0.8;SO_2Cl、1.6)にDMF中NaN_3を反応させ、アジド基の導入を計った。CS基は室温下でも容易に消失し、70℃以下の温度ではその4分の1強は塩素基に、4分の1はアジド基に置換され残りは脱離した。110℃ではアジド基のDSが1.1に達したが、収率が2分の1になった。なお、この反応は不均一だったので、クラウンエーテルを加えて均一反応としてみたが、改善はみられなかった。 アリル化セルロースに、空気存在下酸性サルファイトイオンを作用させて、全く新しい型の水溶性スルホン酸誘導体を調製しようとする試みは、アリル化セルロースの疎水性のために成功しなかった。
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