研究課題
セルロース誘導体の緩和現象は、もともとセルロースが持っている緩和現象に加え、さらに誘導体の置換基の種類、位置、置換度によって左右される。また結晶状態によっても異なる。本研究では種々のセルロース誘導体を合成し、それらの緩和現象の特徴をとらえ、その機構を調べようとするものである。アセチルセルロース、ニトロセルロース、トシルセルロース等のセルロース誘導体を合成し、電気的および力学的特性について検討を行っている。アセチルセルロース、ニトロセルロースにおいては、従来の研究である程度結果を得ている。トシルセルロースの場合は、フィルムでの状態で非常にもろく、延伸による配向性の向上は難しい。適切な可塑剤を検討中である。従って圧電率の測定はできていない。また力学的特性についても測定不能である。トシルセルロースは側鎖の分子量も大きいと同時に双極子能率も大きいと考えられ、誘電率が大きいと予想された。測定してみると、トシルセルロースの誘電率の値は、100H_z、0^°Cで約15を示すシアノエチルセルロース程ではないが、約10を示し、ここで用いたセルロース誘導体の中では大きい。上記のセルロース誘導体では、セルロースの第6位の水酸基についた置換基による圧電、力学および誘電の緩和がみられ、置換基が異なることによってそれらの緩和は異なった温度に現われた。一般に力学および誘電の緩和と圧電の緩和の現われる温度は異なり、圧電と他の2つの緩和とは機構上異なることが予想される。また誘電率について、これらのセルロース誘導体の置換基の分子量の大きさと誘電緩和の周波数特性から求めた活性化エネルギーの間に正の相関がみられた。来年度は置換基の分子量を幅広くとること、置換基の極性を大きくすること、置換基の位置、置換度を制御すること、結晶性の差異および結晶の温度特性等について検討をする。
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