木材の破壊機構を考えるうえで、破壊の時間依存現象は非常に重要な情報を含んでいる。すなわち、疲労破壊には時間の因子と負荷の繰り返しによるダメージの累積の因子が含まれ、その二つが複合して破壊時間が決定されていると考えられる。 今年度は、特に、4点対称曲げによって1Hz対称短形波による疲労試験とクリープ破壊試験を、全く同一の試験条件で行い、時間と繰り返しの因子の破壊時間に及ぼす影響を比較した。 供試材は、無欠点の気乾スプルースで、一本の丸太から200×15×6cmの完全二方柾の角材をとり約1年間天然乾燥したものから試験片を作製した。試験片は20×1×1cmの目ぎれのないもので、上記角材から作製したものをランダムに疲労とクリープに振り分け25℃、RH=65%の恒温・恒湿箱で約一カ月間調整した。 曲げ試験は等モーメント部の長さ16/3cm、トータルスパン長16cmとし、疲労では片振り振幅荷重が、クリープでは初期荷重が静的曲げ破壊荷重の100〜80%になる範囲で試験した。 その結果、負荷応力と破壊時間の対数とは、クリープ、疲労とも相関係数0.93で危険率0.1%以下で有意な直線関係と認められた。両者の回帰式は、 クリープ:LogT=-0.008×F+19.01 疲労:LogT=-0.008×F+18.63 であった。ただし、Tは破壊までの時間(sec)、Fは負荷応力/比重(形質商Kg/cm^2)である。両者の直線の傾きに有意な差は認められず、切片の値は0.1%で有意な差があることが認められた。これは、疲労破壊には時間因子よりも繰り返しによるダメージ累積の影響が大きいことを示す。さらに、Duty比を変えた疲労試験を続行している。
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