先年度にひきつづき、疲労破壊に及ぼす時間と繰り返し数の影響について実験的に検討した。 木材は、粘弾性的性質がつよく、そのことが破壊に至るまでの力学的性質を複雑なものとし、時間と繰り返し数に対する反応も一般の人造材料と異なる。 材料の疲労過程での損傷(D)の発生、累積におよぼす時間(T)と繰り返し数(N)の影響を考えるとき、最も一般的には、線形則が用いられる。すなわち、DにあたえるTとNの影響は互いに独立であり、Dの累積速度もT、Nにたいして独立であると考える。(損傷履歴に独立である)。この仮説によると、疲労破壊条件は1=N_B/N_<BF>+T_B/T_<BC>であらわされる。 スプル-ス気乾の曲げ試験の結果から、クリ-プ破壊とデュ-ティ-比最小条件での疲労破壊を境界値として上式を検証したところ、木材の疲労破壊については線形則がなりたたないことが明らかとなった。その理由として、(1)Dの累積過程には、疲労履歴の効果が含まれる。(2)DにあたえるT、Nの影響に相互作用の効果がある。などが考えられ、木材の疲労破壊の時間、繰り返し数依存性は、これらのことを考慮した非線形性をもつことが推察された。 疲労過程の最大たわみ(Y)、たわみ振幅(Ya)及び残留たわみ(Yr)はY=Ya+Yrの関係にあるが、その経過をデュ-ティ-比との関連で解析した結果、Yaは主としてNの影響が、YrにはTの影響が大きくあらわれることが明らかである。そして、試験片の圧縮座屈線の現われかたもこれに対応する。このことから、たわみ進行は疲労損傷の進行を示すものであることが明らかとなった。
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