研究概要 |
木をかたちづくる遺伝子のうち樹幹に特異的に存在するレクチン遺伝子を対象に初年度は以下の事項を検討した。(1)m-RNA単離条件の検討:樹幹レクチン遺伝子のプローブとして種子レクチン遺伝子を利用するために、初年度は種子からのm-RNA単離を行なった。電気泳動(リボソームRNAバンドの有無)、UVスペクトル、RNase活性の有無などで品質を確認しながらpoly(A^+)RNAを得た。この過程でRNAと強固に結合しているタンパク質の存在が示唆され、これを除去することがRNA収量、品質の向上に重要であることが明らかになった。ポリソームがみられる(レクチンの様な)貯蔵タンパク質生合成時のRNA単離には、脱タンパク質を積極的に行なう必要があると考えられる。(2)レクチン遺伝子の検出:種子レクチンのN末端側アミノ酸配列から推定される塩基配列を合成し、^<32>Pでend labellingした(合成プローブ 17mers,8mixes×2種類)。このプローブと単離したm-RNA分画等をドットブロットハイブリダイゼーションした。明瞭ではないがプローブがRNAとハイブリダイズする結果を得ている(現在追試中)。(3)組換え体作製:上記m-RNAからライブラリを構築、レクチン遺伝子のクローニングを試みたが失敗した。原因を追跡するためにd-CTP-[α-^<32>P]を用いて逆転写酵素によりDNA鎖の伸長をモニターした。対照として用いた市販m-RNAは取込み率、アガロース電気泳動像によるDNA鎖の伸長が共に正常であった。一方試料m-RNAでは取り込み率は低いがDNA鎖は数百kb程度伸度伸長した。この原因として考えられることは(a)試料m-RNA中にLi^+塩が残存して逆転写反応を阻害した。(b)試料中のm-RNA含有割合が少ない。(c)試料m-RNA鎖が切断されている。などである。 初年度は遺伝子クローニング技術に関して導入部分を一応マスターした。レクチン遺伝子に関しては現在(3)を中心に実験を継続中であり、単離したRNAが著しく分解されていなければ初年度の予定完結も近い。
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