昨年調製した種子RNAからcDNAを得る試みはRNA品質に問題があり失敗したので、昨年に引続きRNAの抽出方法を検討した。その結果、特に除タンパク質と除ペクチン処理がRNA品質の向上に重要であることを見いだした。後者を完全に除去することはできなかったが、種子(6回抽出)、樹幹の両組織から比較的きれいなRNAが、常に得られるようになった。樹幹に関しては試料を多量に採取できないため、3回だけ抽出した(7月下旬採取試料では、ゲル上にスメアが存在するだけで、UVスペクトルもきたない。8月中旬および9月初旬採取試料ではスペクトルはきれいで、ゲル上のバンドもはっきりしている。しかし25S:18Sは1:1位で、RNAの一部は切断されている恐れもある)。ハイブリダイゼイションに関しては種子ではレクチン遺伝子が検出できたが、樹幹RNAでは今のところ成功していない。この原因としてプロ-ブの適否、RNA標品の性状等が考えられる。なお、樹幹RNA単離には依然次のような問題点があった。1.樹幹試料には核酸を盛んに分解している細胞が必ず含まれており、高いRNase活性が予想される。2.試料が堅いため、磨砕操作などで温度が上昇しやすく、RNaseが働きやすい。3.樹幹レクチンは年間を通じて存在するが、7〜9月の間に急激に産生される。しかし何回も試料を採取できないため、樹幹RNAを多量に産生する時期が押さえにくい。4.グアニディウム塩のようなカオトロピック試薬で樹薬で樹幹を抽出すると、種子以上に不純物が混在し除去し難い。RNA標品の溶解や、超遠心ほかを妨害してRNA分解のきっかけとなる。
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