本研究は、アコースティック・エミッション(AE)に着目し、切削中のAE信号によって木材切削状態ならびに木材切削工具の磨耗や欠損の状態をインプロセス検出するとともに、それらの監視システムの確立を目的とするものである。 本年度は、まず木材切削における被削材要因の影響を実験装置によって検討し、ついで超仕上かんな盤でのAE測定を試みた。 得られた結果は以下のように要約される。 1.AE信号レベルは縦切削<横切削<木口切削の順に大きく、AEの発生が切り屑生成機構と密接に関係する。 2.いずれの切削においても、AE信号レベルは含水率の増加とともに減少する傾向を示す。 3.AE信号レベルは切削角40°付近で最大となる。 4.AE信号のRMS電圧と供試樹種の気乾比重との関係は、ほぼ直線関係を示し、AEの発生は比重に大きく支配され、高比重の樹種ほど大きくなる。 5.超仕上かんな盤での測定では、AE信号レベルはバイアス角が大きいほど低く、また切削回数の増加とともに低減する傾向を示し、AEの発生は工具磨耗進展や切り屑生成状態の差異に対応していることが認められる。 以上のように、木材切削でのAE測定における含水率、樹種、比重、切削方向、切削角などの被削材要因や切削条件の影響が明らかになった。また超仕上かんな盤のような、いわゆる工具固定型の木材加工実用機械に、AE法を応用しうる見通しが得られた。
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