研究概要 |
魚類、特に真骨類における胎生現象の成立機構を明らかにする目的で、主にメバル属魚類について胎生の特性である妊娠の成立と出産の生理機構を解明しようとした。1.妊娠成立の要件 (1)胎生魚エゾメバル、クロソイ精子について、段階的に浸透圧の異なる電解質及び非電解質溶液中での運動特性を調べ、いずれも300mosmol/kgを中心とする狭い浸透圧条件でのみ運動可能なことを明らかにした。さらに交尾型卵生、真卵生の海産魚類についても同様に検討し、それぞれの種の繁殖様式を反映して精子の運動可能な浸透圧範囲が限定されることを明らかにした。(2)エゾメバル卵母細胞の最終成熟に対する7種のステロイドホルモンとヒト絨毛性ゴナドトロピン (HCG) の効果を生体外条件下で調べた。その結果、ステロイドホルモン中では17α,20β-diOHPが、またHCGも強い卵成熟誘起効果を持つことが確認された。(3)通常の繁殖様式が真の卵生であるメダカに人為的な媒精を行い、実験的に卵巣内での受精及び胚発生を誘起することが出来た。この実験結果から、胎生への適応過程において、受精及び初期発生よりも、代謝活性が増大する後期発生と出産に対応した母体側の適応的刷新が、胎生の成立条件として重要であることを検証した。2.妊娠中の母体と胎仔の関係 (1)エゾメバルの母体卵巣内の発生後期胚で、消化管後腸部に卵黄様物質の取り込みがあることを免疫組織学的に明らかにした。さらにオートラジオグラフィにより、これら高分子物質以外に、発生後期胚が母体から低分子物質の供給を受けている可能性が示された。(2)エゾメバルの卵黄形成及び妊娠期の雌血中ロビテロゲニン (Vg) とは別種の雌特異血清蛋白が多量に存在することを見出した。またこの蛋白がVgと同様にエストロゲン投与により血中に誘導されること、卵母細胞には取り込まれず、卵巣液中に含まれることを明らかにした。
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