1.東京湾、岩手県大船渡湾などで採集した従属栄養性渦鞭毛藻の摂餌生態、生活史や増殖生理について、主にDinophysis属の種を対象としてビデオカメラ付き倒立蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。2.D.fortiiやD.acuminataには光合成色素としてクロロフィルの他にフィコビリンが認められた。フィコビリン蛍光を示す色素体の形状と量が採集地で異なること、および渦鞭毛藻では通常見られない色素であることから、その起源が細胞内に取り込まれた異種生物であることが推測された。特に、フィコビリンが粒状または棒状の色素体様の顆粒内にだけ認められる個体と、顆粒の他に原形質に膜状に広がって認められる個体とがあった。3.D.fortiiとD.acuminata摂餌方法として、粘性を増した細胞表面にクリプト藻Plagioselmis sp.を付着させ、殻板を貫通している小孔を通して細胞内に取り込む過程がわかった。4.中性赤で染色した顆粒をD.acuminataの培養液に入れると食胞中に顆粒が取り込まれることがわかった。これは、殻板を通して微細藻類を吸収する方法と異なる摂餌法をD.acuminataが行うことを示唆するものと考えられた。5.D.fortiiの培養中に大小2個体が縦溝を通して相互の原形質の連絡を作り、大形個体が小形個体を吸収する有性生殖と思われる現象が観察された。6.色素をもたないDinophysis属の一種であるD.rotundataの摂餌生態を調べたところ、有鐘繊毛虫を選択的に捕食することがわかった。摂餌法は、ペダンクルを繊毛虫の原形質に差込み、まず消化液と思われる液を注入して繊毛虫の運動を止め、ついで同じペダンクルを通して原形質を吸い上げる方法であった。吸い上げた原形質はD.rotundataの体内に球状の大きな液胞として貯蔵され、徐々に消化されることがわかった。
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