海洋の流れが鉛直的にも水平的にも均一ではないことに着目し、鉛直移動をしながら流されるフ化直後の仔稚魚の移動経路を推定することを目的とした研究である。この目的を達成するためには三つの方法を組み合せて行う必要があり、第一年度は次の三点を達成させた。1)産卵親魚の集まる海域を知る。海域がわかればその付近をフ化仔魚の移動の出発点とすることができる。2)鉛直移動をともなう日周期活動リズムの自動測定装置を作る。これが完成されることにより、実験水槽内での活動リズムを確かめることができ、海洋での実際の研究に応用できる。3)日中と夜間に仔魚が遊泳する水深にあわせて密度を調整した漂流ブイを作製する。このブイを追跡することにより、移動経路を推定することができる。 成果:1)親魚の産卵場は5月から7月にかけて形成され、主に若狭湾西部では、丹後海中央から東部にかけてであることがわかった。 2)自動測定装置は二枚のパネルで作った。このパネルを水槽(50cm×30cm×5cm)の両面に向かい合せるようにし、片面は発光ダイオードを埋め込み、他の面に光トランジスタを埋めた。個体が光をさえぎるとその位置と時刻をマイクロコンピュータのフロッピーディスクに入力するとともに、ブラウン管上でもモニタできるようにした。記録精度はセンサ間隔は縦3cm横1cm、全てのセンサを走査する早さは最大0.1Hzであるが、現在は1分間隔で走査させることにしている。 3)ニュートラルブイは市販の底曳網用フロートを用いた。フロートが淡水中でほぼ完全に水表面から没するよう錘りを調整して取りつけた。さらにこのフロートの下へ、仔魚が遊泳している水深の水を採水してゴム風船に入れつり下げた。フロートは海水が鉛直的に安定成層を形成している時には、非常に効果的に所定の水深で保たれた。
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