研究概要 |
哺乳類では、C3は補体の古典経路および第2経路に共通した成分であるのみならず、活性化によって食細胞の貪食を促進する作用のあるフラグメント(C3b)を生成するなど、生体防御に中心的役割を果たすことが知られている。本研究では、コイのC3を血清から単離し、その理化学的性質を調べた。 コイのC3活性は、溶血中間複合体EAC14とヒドラジン処理コイ血清(Hd;C3とC4を欠く)からなる反応系に検体を加え、25℃で60分間溶血反応を行って測定した。なお、EAC14は5mMCa^<2+>と5mMTTHA(Mg^<2+>の選択的キレート剤)の存在下に、感作ヒツジ赤血球とコイ血清(200%溶血相当量)とを0℃で10分間反応させて調製した。また、Hdはコイ血清に1/(10)容のIMヒドラジン(pH7.5)を加え、25℃で30分間インキュベートして得た。C3の精製は、100mlのコイ血清をBlue-Cellulofine,QAE-Sephadex,SepharoseCL-6BおよびCM-Sephadexカラムクロマトグラフィーに順次かけて行った。精製C3の最終収率は17%で精製度は27倍であった。このC3は、SDS電気泳動および免疫電気泳的に均質であり、分子量はSepharose-CL-6Bを用いたゲル濾過法によって約19万と推定された。さらに、還元条件下でSDS電気泳動を行うと、分子量約12万のα鎖と約7万のβ鎖とに分かれ、両鎖とも過ヨウ素酸-シッフ試薬で染色され、糖を含むことが明らかとなった。精製C3は、コイ血清で処理したザイモサンからIMヒドラジン(pH7.5)で溶出されるタンパク質と同一の抗原性を示した。また、哺乳類で知られているC3の不活化剤でコイC3を処理したところ、コイC3は0.5Mヒドロキシルアミンや0.2Mメチルアミンによって容易に失活したが、2MKBrや0.5MKSCNによってはほとんど失活しなかった。 今後はコイのB因子、D因子を単離すると共に、細菌の細胞膜によるC3の活性化メカニズムを解明したいと考えている。
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