研究概要 |
1.サルモリジンのサケ科魚類に対する毒性およびトキソイド化ー精製サルモリジンを平均体重8.3gのエゾイワナと平均体重6.3gのニジマスに筋肉内接種(1m)または平均体重6.2gのエゾイワナに腹腔内接種(ip)して2週間観察したところ、50%致死量はエゾイワナで196μg/kgim、ニジマスで58μg/kgim、エゾイワナで556μg/kgip以上であった。次に、サルモリジンの加熱あるいはホルマリン処理によるトキソイド化について検討したところ、100℃で5分間の加熱または0.4%ホルマリンを添加して37℃で1週間静置するとトキソイド化されることが明らかとなった。 2.サルモリジントキソイドワクチンに対する魚類の免疫応答ー60μgの加熱トキソイドワクチンを平均体重120gのエゾイワナにim後、1週間おきに5週間後まで血中の凝集抗体価の消長を間接赤血球凝集反応法で、沈降抗体形成の有無をオクタロニー法で検討したところ、凝集抗体価は1、2週間後で8、3週間後で16から512、4、5週間で16から128となった。また、沈降抗体は3から5週間に検出された。 3.サケ科魚類および高等脊椎動物赤血球に対するサルモリジンの溶血性ーサケ科魚類のカワマスとエゾイワナ(Salvelinns属)、ギンザケとヤマメ(Oncorhynchus属)およびニジマス(Salmo属)の赤血球に対する溶血性をミクロタイター法で調べたところ、溶血価はカワマスで512から1,024、エゾイワナで512、ギンザケで128、ヤマメで64から128、ニジマスで32から64であった。これらの結果から、サケ科魚類でも属レベルで赤血球膜の構造に差異があると推定される。さらに、ホ乳類のウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモットおよび鳥類のニワトリ、ガチョウの赤血球の感受性をヘモグロビン吸収法で調べたところ、これらの赤血球に対する本毒素の溶血価は2以下であった。従って、本毒素はとくにサケ科魚類に対して強い溶血性を有するものと思われる。
|