研究概要 |
1.サルモリジンの溶血作用機構 (1)サルモリジンの溶血活性カイネティクスー一定温度下でエゾイワナ赤血球にサルモリジンを反応させたところ,サルモリジン濃度が高い程,短時間で溶血し,濃度と溶血反応時間との間に相関性が認められた。 (2)赤血球膜成分によるサルモリジンの不活性化ー各種リン脂質とサルモリジンを混合し,溶血活性を測定した。コレステロ-ル,ホスファチジルイノシト-ル,ホスファチジルセリン,ホスファチジルコリン,リゾホスファチジルコリン,スフィンゴミエリンは溶血作用に影響しなかった。 (3)赤血球膜成分の分離およびサルモリジンとの結合性ーサルモリジンの溶血作用はアシアログリコフォリンによって反応開始15分後,約2倍まで促進され,両者の協同作用によって溶血活性が増強すると推定された。 2.酵素抗体法によるサルモリジンの定量および罹病魚組織中におけるサルモリジンの検出と定量 (1)酵素抗体法によるサルモリジンの定量法の確立ーポリスチレンビ-ズを用いたサンドウィッチ法でサルモリジンの検量線を作成したところ,定量可能範囲は4〜80ng/mlと考えられた。Aeromonas salmonicida の培養上清中のサルモリジンは培養開始直後から検出され,21時間以降増加し,12,24,36時間後にはそれぞれ3.9,10.3,20.5mg/μlと測定された。 (2)酵素抗体法による羅病魚組織中におけるサルモリジンの検出と定量一筋肉内接種によって実験的感染したサクラマスの接種部筋肉,脾臓および腎臓中のサルモリジン量をマイクロプレ-トを用いたサンドウイッチ法で測定した。その結果,サルモリジンは斃死魚および生残魚ともに接種部筋肉で検出され,接種菌量6.6×10^7,6.6×10^6 cfu/mlでそれぞれ4.4〜37.5μg/g,85ng〜10.1μg/gであった。脾臓および腎臓ではサルモリジンの存在を示す反応が認められたが,定量はできなかった。
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