1.無毒養殖クサフグおよび天然トラフグを親魚とし人工受精・ふ化・稚魚の飼育などフグを養殖し定期的に毒性をチェックするとともに常時実験に使用する養殖クサフグおよびトラフグを確保した。 2.フグにおける毒の蓄積能を調べる手始めとして、蓄積に対する腹腔内注射と筋肉注射、投与毒量、クサフグとトラフグの種による差異などについて検討した。投与方法により、毒の蓄積には差は認められなかった。蓄積量は投与量に比例し、回収率は投与量により大差なく、クサフグで約50%、トラフグで約30%であった。クサフグに蓄積された毒量は肝臓が最も多く、消化管は少なかったが、毒性では消化管においては高く、肝臓を上回る検体もみられた。トラフグでは肝臓および消化管には毒が検出されず皮膚に多量に蓄積され、その回収率は約20%におよび毒の大部分が皮膚に蓄積されることが判明した。 3.ニホンイモリからテトロドトキシン(TTX)の誘導体である6-epiTTX、11-deoxyTTX等の存在が報告された。そこでアカハライモリよりTTX誘導体の単離を試みた。TTXの単離精製法に従って、活性炭カラム、Bio-Gel P-2カラム、Bio-Rax 70カラムおよびODSカラムクロマトグラフィ-などにより6-epiTTXを単離した。アカハライモリにもニホンイモリと同様な誘導体が存在することを確認した。なお、このものの毒性はTTXの約40分の1であった。 4.単離した6-epi-TTXを使用して、フグへの蓄積能を検討した。無毒養殖クサフグおよびトラフグに腹腔内投与し、経時的にサンプリングを行い、肝臓、生殖腺、皮膚および筋肉における蓄積を調べた。クサフグにおいてはTTXとほぼ同様の挙動を示したが、トラフグでは各臓器への蓄積において少々異なった結果を得た。
|