1.6種類刺毒魚(オニダルマオコゼ、オニオコゼ、ミノカサゴ、ハナミノカサゴ、ネッタイミノカサゴ、キリンミノ)の背ビレの棘から調整した粗毒について各種生物活性を調べたところ、いずれの毒も強い致死活性、ウサギ赤血球に対して特異的な溶血活性、ヒアルロニダーゼ活性を示した。一部には浮腫形成活性、毛細血管透過性亢進活性も検出された。致死活性・溶血活性はいずれの毒でも非常に不安定で、凍結・凍結乾燥および加熱により完全に失活した。 2.オニダルマオコゼ類の一種Synancejatrachynisの毒に対する市販抗毒素は、オニダルマオコゼ毒の致死活性・溶血活性をinvitroで強く抑制した。また、その他の魚類刺毒の活性に対してもかなりの抑制効果を示し、抗毒素は魚類刺毒による刺傷の治療に広く適用できると考えられた。抗毒素1mlあたりの致死活性中和力価は、オニダルマオコゼ毒ではLD50の7400倍、その他の魚類の毒では1200〜3000倍と求められた。この中和実験結果から、6種魚類刺毒の免疫学的性質はお互いに類似していることが示唆された。なお、オニダルマオコゼ毒の毛細血管透過性亢進活性は、各種抗炎症剤では抑制されなかった。 3.オニダルマオコゼ毒液に水を加えると多量の沈殿を生じ、ヒアルロニダーゼ活性は可溶部に検出された。致死因子は沈殿するが活性を保持していること、また塩溶液に可溶であることを見い出し、TSK-gelG3000SWを用いたHPLCによりSDS-PAGE的に均一な標品が得られた。精製致死因子のLD50は47μ/kgで、溶血活性・毛細血管透過性亢進活性もあわせ持つことが判明した。致死因子はpH7.5付近でのみ比較的安定で、還元剤の存在により安定性は増した。分子量はゲルろ過およびSDS-PAGEのいずれでも約90000と算出され、単量体タンパク質と推定された。アミノ酸組成では酸性アミノ酸含量の高いことが特徴で、Cysの存在も認められた。
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