研究概要 |
かまぼこはエントロピ-弾性体の1種でありながら、応力緩和、クリ-プ試験で得られる瞬間弾性率および動的粘弾性試験で得られる動的弾性率、損失弾性率は温度の上昇につれて低下する。かまぼこの物性のこの温度異常性の機構を明らかにするために、かまぼこの中の水の状態に対する温度の影響を調べた。かまぼこの温度を0から80℃まで上昇すると、離奨による重量減少、静電容量及び圧出水分量の増加が認められた。さらに、IR差スペクトルで観測される自由水は増加した。これらの結果は温度の上昇につれてその中の水の流動性が大きくなる事によって、弾性率が低下するという可能性が生じた(E.Niwa,E.S.Chen,S.Kanoh and T.Nakayama;Nippon Suisan Gakkaishi,54,1789(1988).)。つぎに、これについて確かめるためにハイドロゲルのモデルを使って実験を行った。テニスボ-ルにあけた孔にポリ塩化ビニル管をさしこんで接着し、これにポリエチレングリコ-ル600(PEG)溶液を満たしたものをモデルとし、物性を測定した。PEG濃度を上げると応力-歪曲線から得られる弾性率、粘性率は増加した。また、応力緩和、クリ-プ試験から得られる瞬間弾性率、粘性率は増加したが、平衡弾性率は変化しなかった(E.Niwa,E.S.Chen,S.Kanoh and T.Nakayama:Agric.Biol.Chem.,52,1065(1989).)。さらに、変形によって水が流出することなく、一つの部屋から他の部屋に流動できるように設計された3個の密閉系モデルを使って検討した。これらモデル中の水の流動性を抑えると粘性率では例外もあったが、瞬間弾性率はすべての場合増加した。モデルを使ったこれらの結果から食品ハイドロゲルの粘弾性はそれを構成する高分子の網状構造の機械的強度だけでなく、その中に含まれる水の流動性によって影響されると推定した。(E.NIwa,E.S.Chen,and S.Kanoh:Biol.Chem.,54,393(1990).)。
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