海藻を食べているアワビの消化管には各種の海藻多糖を分解しうる酵素が検出された。前年度の研究において、これらの酵素の中でとくに強い活性を示すβ-マンナナ-ゼをアワビの消化管から分離・精製して、その性質を明らかにした。すなわち、アワビのβ-マンナナ-ゼは、多くの海藻の骨格多糖であるβ-1、4-マンナンを加水分解して2〜6糖を生成するが、単糖(マンノ-ス)にまでは加水分解しないことを明らかにした。 このことから、同様にアワビの消化管中に検出されるβ-マンノシダ-ゼが、β-マンナナ-ゼの作用によりβ-1、4-マンナンから生成したオリゴ糖をマンノ-スにまで加水分解する役割を果たしているのではないかと考え、本年度は、この点を明らかにすることを目的とした。 アワビ内臓のアセトン乾燥粉末から酵素を抽出し、硫酸アンモニウム塩析、Sephacryl S-2f00ゲル濾過、DEAE-Sephadex A-50クロマトグラフィ-、CM-Sephadex C-50クロマトグラフィ-およびHydroxyapatiteクロマトグラフィ-によりβ-マンノシダ-ゼを分離・精製した。 精製したβ-マンノシダ-ゼ標品は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動において均一であり、β-マンナナ-ゼや他のグリコシダ-ゼの活性はまったく検出されなかった。本酵素の最適pHは4、5付近にあり、本酵素はpH4〜6の範囲において5℃で2日間安定であった。 緑藻ミルから分離したβ-1、4-マンナンから、部分加水分解およびSephadex G-25(superfine)ゲル濾過により調整したオリゴ糖(2〜7糖)を基質に用いて、精製β-マンノシダ-ゼのこれらオリゴ糖に対する作用性を調べた。本酵素は、いずれのオリゴ糖にも作用してマンノ-スを生成したが、とくに2糖および3糖を速やかに加水分解した。オリゴ糖の重合度が高くなるにつれて、本酵素によるオリゴ糖の加水分解速度が著しく低下する傾向を示した。
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